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ゆいしきさんじゅうじゅ
● 唯 識 三 十 頌 ●

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　『唯識三十頌』は，世親の代表的著書と言われています。わずか３０の偈頌の中に，唯識の教理がまとめあげられています。同じ世親の著書で『唯識二十論』があります。『唯識二十論』が外界に事物が実在するとする他派の批判を反論することにより唯識という立場を成立させることを目的としているのに対し，『唯識三十頌』は唯識を真正面から全面に打ち出した著作です。

　このコーナーは，横山紘一著『わが心の構造-『唯識三十頌』に学ぶ』をテキストとして，私自身のためにまとめたレジュメです。興味ある方は，是非もとのテキストを読まれることをおすすめします。

　各頌の解説は一通り完了（99.05）していますが，今後は他のテキスト等を読み返して訂正や補充することがあれば，その都度内容を更新します。更新内容は，このフォントカラーで表示しています。

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【唯 識 三 十 頌】 〜世親菩薩造

各偈頌をクリックすると別ウィンドウに解説があります。
各読み下し文をクリックすると訳があります。

【偈　頌】		【読み下し文】
稽首唯識性　満分清浄者 我今釈彼説　利楽諸有情		唯識の性において，満に分に清浄なる者を稽首す。 我，今，彼の説を釈し，諸の有情を利楽せん。
１	由假説我法　有種種相転 彼依識所変　此能変唯三	仮に由りて我・法ありと説く。種種の相転ずること有り。 彼れは識が所変に依る。此れが能変は唯し三つのみなり。
２	謂異熟思量　及了別境識 初阿頼耶識　異熟一切種	謂わく異熟と思量と，及び了別識との識ぞ。 初めのは阿頼耶識なり。異熟なり。一切種なり。
３	不可知執受　処了常与触 作意受想思　相応唯捨受	不可知の執受処と了なり。 常に触と， 作意と受と想と思と相応す。 唯し捨受のみなり。
４	是無覆無記　触等亦如是 恒転如暴流　阿羅漢位捨	是れ無覆無記なり。触等もまた是の如し。 恒に転ずること暴流の如し。 阿羅漢の位に捨す。
５	次第二能変　是識名末那 依彼転縁彼　思量為性相	次のは第二の能変なり。是の識をば末那と名づけたり。 彼れに依りて転じて 彼れを縁ず。 思量するをもって性とも相ともなす。
６	四煩悩常倶　謂我癡我見 并我慢我愛　及余触等倶	四の煩悩と常に倶なり。謂わく我癡と我見と， 并びに我慢と我愛となり。 及び余と触等と倶なり。
７	有覆無記摂　随所生所繋 阿羅漢滅定　出世道無有	有覆無記に摂めらる。 所生に随って繋せらる。 阿羅漢と滅定と，出世道とには有ること無し。
８	次第三能変　差別有六種 了境為性相　善不善倶非	次の第三の能変は，差別なること六種あり。 境を了するをもって性とも相とも為す。 善と不善と倶非となり。
９	此心所遍行　別境善煩悩 随煩悩不定　皆三受相応	此の心所は遍行と，別境と善と煩悩と， 随煩悩と不定となり。皆，三の受と相応す。
10	初遍行触等　次別境謂欲 勝解念定慧　所縁事不同	初の遍行というは触等なり。 次の別境というは謂わく欲と， 勝解と念と定と慧となり。所縁の事は不同なるをもってなり。
11	善謂信慚愧　無貧等三根 勤安不放逸　行捨及不害	善というは謂わく信と慚と愧と，無貧等の三根と， 勤と安と不放逸と，行捨と及び不害とぞ。
12	煩悩謂貧瞋　癡慢疑悪見 随煩悩謂忿　恨覆悩嫉慳	煩悩というは謂わく貧と瞋と，癡と慢と疑と悪見とぞ。 随煩悩というは謂わく忿　恨と覆と悩と嫉と慳と，
13	誑諂与害（心へん+喬） 無慚及無愧 掉挙与（心へん+昏）沈 不信并懈怠	誑と諂と害と（心へん+喬）と， 無慚と及び無愧と， 掉挙と（心へん+昏）沈と， 不信と并びに懈怠と，
14	放逸及失念　散乱不正知 不定謂悔眠　尋伺二各二	放逸と及び失念と，散乱と不正知となり。 不定というは謂わく悔・眠と，尋・伺とぞ。二に各二つあり。
15	依止根本識　五識随縁現 或倶或不倶　如濤波依水	根本識に依止す。五識は縁に随って現じ， 或るときには倶なり。或るときには倶ならず。濤波の水に依るが如し。
16	意識常現起　除生無想天 及無心二定　睡眠与悶絶	意識は常に現起す。無想天に生じたると， 及び無心の二定と，睡眠と悶絶とをば除く。
17	是諸識転変　分別所分別 由此彼皆無　故一切唯識	是の諸の識は転変して，分別たり。所分別たり。 此れに由りて彼れは皆無し。故に一切唯識のみなり。
18	由一切種識　如是如是変 以展転力故　彼彼分別生	一切種識の，是の如く是の如く変ずるに由り， 展転する力を以ての故に，彼彼の分別生ず。
19	由諸業習気　二取習気倶 前異熟既尽　復生余異熟	諸の業の習気と，二取の習気と倶なるに由りて， 前の異熟既に尽きぬれば，復，余の異熟を生ず。
20	由彼彼遍計　遍計種種物 此遍計所執　自性無所有	彼彼の遍計に由りて，種種の物を遍計す。 此の遍計所執の自性は所有無し。
21	依他起自性　分別縁所生 円成実於彼　常遠離前性	依他起の自性は，分別の縁に生ぜらる（依他起の自性の分別は縁に生ぜらる）。 円成実は彼が於に，常に前のを遠離せる性なり。
22	故此与依他　非異非不異 如無常等性　非不見此彼	故に此れは依他と，異にも非ず不異にも非ず。 無常等の性の如し。 此れを見ずして彼れをみるものには非ず。
23	即依此三性　立彼三無性 故仏密意訳　一切法無性	即ち此の三性に依りて，彼の三無性を立つ。 故に仏，密意をもって，一切の法は性無しと説きたもう。
24	初即相無性　次無自然性 後由遠離前　所執我法性	初のには即ち相無性をいう。次のには無自然の性をいう。 後のには前の所執の我・法を遠離せるに由る性をいう。
25	此諸法勝義　亦即是真如 常如其性故　即唯識実性	此れは諸法の勝義なり。亦は即ち是れ真如なり。 常如にして其の性たるが故に，即ち唯識の実性なり。
26	乃至未起識　求住唯識性 於二取随眠　猶未能伏滅	乃し識を起こして，唯識の性に住せんと求めざるに至るまでは， 二取の随眠に於て，猶未だ伏し滅すること能わず。
27	現前立少物　謂是唯識性 以有所得故　非実住唯識	現前に少物を立てて，是れ唯識の性なりと謂えり。 所得有るを以ての故に，実に唯識に住するには非ず。
28	若時於所縁　智都無所得 爾時住唯識　離二取相故	若し時に所縁の於に，智が都て所得無くなんぬ。 爾の時に唯識に住す。二取の相を離れぬるが故に。
29	無得不思議　是出世間智 捨二麁重故　便証得転依	無得なり。不思議なり。是れ出世間の智なり。 二の麁重を捨しつるが故に，便ち転依を証得す。
30	此即無漏界　不思議善常 安楽解脱身　大牟尼名法	此れは即ち無漏界なり。不思議なり。善なり。常なり。 安楽なり。解脱身なり。大牟尼なるを法と名づく。
巳依聖教及正理　分別唯識性相義 所獲功徳施群生　願共速証無上覚		巳に聖教と及び正理とに依りて，唯識の性と相との義を分別しつ。 所獲の功徳をもって群生に施す。願くは共に速かに無上覚を証せん。

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