澤木興道 正確な修行〜『道元禅参究』より〜

澤木興道老師の『道元禅参究』からの抜粋です。
この本は『永平広録』で坐禅について取り扱っている部分を提唱したものです。

「況や仏祖正伝之骨肉髄」，----仏祖正伝之骨肉髄というのは坐禅のことをいうのである。「豈之を軽んぜんや。」そうすれば坐禅の仕方ということがどうでもよいというのじゃない。精密機械のように一分一秒の狂いもあってはならない。したがってこの坐禅の，世間の言葉で言うたら要領，心得，身構え，こまかくいえば顔の勾配までが一分の狂いがあってはならないわけである。そうすればこの坐禅はどう坐ったらよいのか，またなんのために坐るのか，また一体どうなるというのかをはっきりさせておかねばならない。そしてこの坐禅の仏祖正伝の皮肉骨髄を，慎重な態度でもって実参実究せねばならんのである。 この実参実究ということは，いかに一分の狂いもないようにと努めるということである。だから「豈之を軽んぜんや」というわけである。したがって坐禅はいいかげんにただ猿の物まねみたいに人のまねするだけでいいものであるわけはない。あるいは，またいわれ因縁を知らずにただ目茶苦茶に坐っていいものであるわけのものではない。「之を軽んずる者は真箇是れ畜生なり。」修行をいいかげんにすますものは，道元禅師にとっては，とんでもない連中であり，こんな連中は人間どころか畜生だといわれるわけである。かように正確な修行の大切なことは行持の巻にもあるように「われらが行持によりて，諸仏の行持見成し，諸仏の大道通達するなり。」と正確な修行，すなわち行持が，われわれをそのまま仏祖にするというものである。 すなわちそれではどうして行持がわれわれを仏祖にするのかというと，正確な行持が行せられるということは，それがとりもなおさず正法眼蔵涅槃妙心（おさとり）であるからである。つまり仏祖の続きを行持するものが正法眼蔵涅槃妙心であり，これがこの坐禅そのものであるからである。そしてこの行持がそのまま仏祖の行持でなければならないのである。同時にこれは「三途六道の群類を解脱せしめる行持」であるのじゃから，この行持を軽んずる者はとんでもない連中で，人間どころかこれこそ真箇畜生なりである。 （p76-77）